それは旧知のディレクターの1本の電話からはじまった

「今、東南アジアの子供に教育支援するNGOにいるんだけど、ラオスに子供の笑顔の写真を撮りに行かない? 
ギャラは出ないけど!ついでに交通費も自腹ね!」・・・・

私は、写真を撮ってお金を頂くことを職業にしているプロカメラマンであり、今までならば即お断りするところでしょうが、なぜか心が騒ぐのが自分でもよく分りました。
と言うか、いくつかの問題はあったものの、その場でほとんど行く気になっている自分に驚きました。

写真を撮影してお金を頂くことを職業として、写真を撮り続けていつのまにか25年以上・・・
だからこそ、一度立ち止まり、写真を撮ることの原点に戻ることが必要だと自身で感じていたのかもしれません。
何が原点なのか?なぜラオスなのか?聞かれてもなかなか言葉で説明出来ませんが・・

そんな訳で《ギャラ無し、写真の制約もなし、自分の好きな写真を撮る》ラオスへの旅に出発することになりました!

今回のお話はタイ、ラオス、カンボジアなどの子供達に日本の篤志家(ドナー)からの寄付金で、学校建設や教育支援をおこなっているNGO団体である、《一般財団法人民際センター》さんの企画でアーティストの日比野克彦氏が、民際センターが支援をおこなっているラオスの村を訪ねて、そこで絵のワークショップをおこなうのに同行する旅となります。

ラオスってどこにある? どんな国なの?

正式な名称は、ラオス人民民主共和国
広さは日本の本州とほぼ同じで、人口は約600万人

我々が訪れたポントゥム村はサワンナケート県ウトゥムポーン郡にあり、人口約2700名、533世帯、374棟の比較的大きな村です。
平均年収は380US$(¥34.000)程度だそうです

ほとんどの家が高床式になっており、村に電気はきているものの電線がきていない家も多くあるようでした。
水道設備はなくポンプや人力での井戸からの給水となります。
もちろんガスなどはなし。プロパンガスも見なかったような・・
水牛、ニワトリ、牛、カモ、犬はあたりまえにそのあたりをウロウロしています。
主食は餅米を蒸したもので主食をはじめほとんどが自給自足に近い生活のようです。


東南アジアの最貧国?平均年収¥34.000程度??・・・なんかちょっとヤバい国じゃね、ラオス!?

ネットなどで調べても、ラオスの情報はあまりなく《微笑みの国》など、いい表現もある反面、やはり貧しさに関連した話題が多く出てくるようです。

正直、最初の私の頭の中でのイメージは、東南アジアの某国のゴミの山に暮らす人々のような暮らし(そこも行ったことないのであくまでイメージですが)・・・清潔感もなくみんな殺伐として貧困と戦い、その中で子供だけが健気に笑顔で頑張っている・・・でも外国人が来ると手を出しながら近寄ってくる・・・

そんな漠然としたイメージで、何か大変な旅になるかも・・と思っていました。

ポントゥン村のみなさん、ゴメンナサイ! 心が洗われるぐらいに素敵なところでした。

村に入った第一印象は、「穏やかなところだな〜」

むかし、夏休みに田舎のバアちゃんちに、麦わら帽子をかぶって遊びに行ったときのような感覚ですかね。
時間がゆったりと流れ、大人も子供もそれに身を任せおだやかに生きているようです。

確かにかつてはほとんど自給自足だった村に資本経済が入ってきて、いろいろ問題も出てきているのでしょうが、
まだみんなが同じ時間の流れの中で、時間を共有しながら生きている感じでした。
だから子供だけでなく、大人達の笑顔も素敵でしたよ。
ラオスに行った人がよく「戦前の古き良き日本のよう」と、たとえるそうですが何となく分かる気がします。

言葉はラオス語なのですが、英語はオーケー、ワン、ツー、スリーをはじめまったく通じません。
私も「サバイディー」=こんにちわ,と「ニム!」=笑って!!の2つの言葉だけで村中を歩き回りました。

でもみんな優しかったですよ。私が子供にカメラを向けると、まわりの大人から「ニム!ニム!!」の声が・・
村中の人に私は『カメラを構えてはニム!!と叫んでる人』と、認識されたようです。

《笑ってごらん!子供のように!!》

このサイトのタイトルは私が写真学生だった30数年前に友人と開催した写真展と同じタイトルになっています。
ハタチの時に子供を撮影して《笑ってごらん!子供のように!!》と言った自分と、
30年後に同じように子供を撮影して《笑ってごらん!子供のように!!》と言っている自分・・・

何が変わり、何が変わっていないのか?・・それを確かめる旅だったのかも・・・

今回の旅の機会を与えていただいた民際センターのスタッフの皆様、アーティストの飽くなき好奇心のすごさを見せて頂いた日比野克彦さんに心より感謝をこめて。
この写真達を出発の3週間前に永眠した母親に贈ります。貴女の最後の笑顔は本当に童心に還った子供のようでした・・。

2010.10. Photographer 渡部 明浩(Photo-Can-Do)

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